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医療法人あいびー院長/佐々木整形外科麻酔科クリニック (医社)東北福祉会理事長/介護老人保健施設せんだんの丘 佐々木信之
高齢者においては、骨粗鬆症、下肢の変形性関節症や関節炎、脊椎の変形による神経障害など、それぞれの障害がたとえ軽度でも、機能的に連動しながら身体運動を支えている運動器の障害が重積することで、移動や歩行に支障をきたすことが多いのです。ロコモを構成する障害は、メカニカル・ストレスが適正でないことに起因しています。運動器はたえずメカニカル・ストレスを受けています。重力というメカニカル・ストレスを受けない宇宙飛行士が帰還後しばらくは歩行もままならないことはよく知られた事実ですし、逆にスポーツ外傷を負うほどの強度のメカニカル・ストレスもロコモの要因となります。この意味で、人間の一生は運動器の障害と回復を繰り返しながら、要介護リスクが少しずつ重積するプロセスともいえますので、ロコモの予防には高齢者のみならず働き盛りの時期から、メカニカル・ストレスの適正な管理が大切になってきます。 ロコモの原因 運動器の障害の原因には、大きく分けて二つあります。 2)加齢による運動器機能不全 ロコモは「ねたきり」や「要介護」の主要な原因 ロコモは、メタボや認知症と並び、健康寿命の短縮、ねたきりや要介護状態の3大要因のひとつになっています。 ロコモと運動器不安定症 運動器不安定症は、いわば「転倒リスクが高まった、運動器疾患」といえます。具体的には、65歳以上であること、運動機能低下をきたす疾患(またはその既往)が存在すること、日常生活自立度判定が、ランクJまたはAであること、運動機能評価テストの項目(開眼片脚起立15秒以下、3mTUGテスト11秒以上)を満たすこと、が条件となります(図1)。 ロコチェック(ロコモーションチェック) 1) 片脚立ちで靴下がはけない 2) 家の中でつまずいたり滑ったりする 3) 階段を上るのに手すりが必要である 4) 横断歩道を青信号で渡りきれない 5) 15分くらい続けて歩けない これら日常生活で自分でも気づくことができる、5つの項目のうちひとつでも当てはまればロコモが疑われます。整形外科医が外来で相談を受けて、適切な指導を積極的に行っていきたいと考えています(図2)。 ロコトレ(ロコモーショントレーニング) 開眼片足立ち訓練(ダイナミックフラミンゴ療法)=片脚ずつ交互に行ってください。右足立ちで1分間、さらに左足立ちで1分間。朝昼晩、1日3回繰り返してください。 スクワット(股関節の運動)=5〜6回繰り返し、1日3回行います。 ロコモの目標 ロコモの目標は、人生80年時代に寝たきりを作らないことであり、高齢者の自立が保たれ、健康寿命が平均寿命と同じに近づく社会の実現にあります。 ------------------------------------------------------------------------------ 表1:介護が必要となった主な原因 ( % )
厚生労働省、平成19年国民生活基礎調査の概況(一部改変) 図1:ロコモと運動器不安定症 図2:ロコチェック 図3:ロコトレ |
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