ロコモキャンペーン開始
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1)「ロコモ」に関して今後、NHK等、様々なメディアを使ったキャンペーンが始まります。
2)ロコモが疑われたら「整形外科専門医」を受診しましょう。
ロコモに関する基礎資料
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日本臨床整形外科学会
http://www.jcoa.gr.jp/
ロコモ:ロコモティブ症候群;運動器症候群ってなに
http://www.jcoa.gr.jp/locomo/index.html
運動器不安定症とは
http://www.jcoa.gr.jp/gozonzi/content/undokihu.html
その他
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e-CLINICIAN
運動器不安定症の意義:ダイナミックフラミンゴ療法の効果
http://www.e-clinician.net/vol54/no559/index.html
「運動器の 10 年」世界運動の目指すもの
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-19-t1025.pdf
医学書院/週刊医学界新聞(第2737号 2007年06月25日)
AHI(Ann Hendrich Inc.)の転倒・転落防止プログラム
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02737_07
日医雑誌今月号 2009年2月1日 第137巻・第11号
転倒・転落をめぐって特集号
http://www.med.or.jp/cme/jjma/newmag/13711/13711.html
報道用資料 運動器不安定症の要因としての骨粗鬆症
-その問題点と対策- 監修:遠藤 直人
http://www.joa.or.jp/member/committee/080903houdou.pdf
運動器の10年
http://www.bjdjapan.org/index.html
日本ロコモティブシンドローム研究会
http://j-locomo.com/Welcome.html
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日本臨床整形外科学会(平成20年 9月 5日)第1767号
■ ロコモと運動器不安定症について
ロコモと運動器不安定症についてはJOA広報室ニュース(20年7月15日、4月15日)にも記載されているとおり、その定義は異なります。JCOA会員の中には一部にロコモと運動器不安定症を混同されている先生方がおられるようですので、以下の骨と関節の日記者会見(9月4日)におけるJOA理事長中村耕三先生のmessage及び7月15日、4月15日の広報室ニュースの記事をご理解の上、特に本年の骨と関節の日のテーマが運動器不安定症(骨粗鬆症)となっておりますので正しく国民への広報を賜りますようお願いします。
(JCOA理事長 藤野 圭司)
Message(骨と関節の日記者会見.9月4日)
ロコモティブシンドロームと運動器不安定症
社団法人日本整形外科学会理事長 中村耕三
日本人の平均寿命は過去最高を更新し続け、女性85.99歳、男性79.19歳に達しています。反面、高齢化の急速な進展に伴い、要介護になる方の増加が深刻であり、平均寿命と健康寿命の乖離が国民的課題となっています。
要介護の二大原因は脳血管疾患と骨・関節疾患、すなわち循環器と運動器の障害であることから、平成19年4月に国がとりまとめた「新健康フロンティア戦略」は介護予防対策の柱として「運動器疾患対策の推進、骨・関節・脊椎の痛みによる身体活動低下、閉じこもりの防止」を打ち出し、具体的な取り組みが進められています。
本資料でご説明する運動器不安定症は、転倒リスクが高まり、骨折から寝たきりに至りやすい病態として、保険収載もなされた疾患であり、その主な要因としての骨粗鬆症との関係を整理し、報道関係者にご理解いただくことはきわめて社会的意義のあることと考えます。
しかし、運動器の障害は、要支援、要介護1などの比較的軽度の要介護の原因としても大きな割合を占めていることから、運動器不安定症の概念だけでは社会のニーズに十分対応できないことも事実です。そこで、昨年来、運動器不安定症をも包含する傘概念として、ロコモティブシンドローム(locomotive symdrome)を提唱しています。
ロコモティブは運動器(locomotive organs)のことで、ロコモティブシンドロームは運動器の障害により要介護になるリスクが高まった状態をさします。
高齢者においては、骨粗鬆症、下肢の変形性関節痛や関節炎、脊椎の変形による神経障害など、それぞれの障害がたとえ軽度でも、機能的に連動しながら身体運動を支えている運動器の障害が重積することで、移動や歩行に支障をきたすケースも多いとみられます。ロコモティブシンドロームはこのような病態に対応した予防医学的概念で、メタボリックシンドロームに類似した概念といえばわかりやすいかもしれません。ロコモティブシンドロームを構成する障害は、メカニカル・ストレスが適正でないことに起因しています。運動器はたえずメカニカル・ストレスを受けています。重力というメカニカル・ストレスを受けない宇宙飛行士が帰還後しばらくは歩行もままならないことはよく知られた事実ですし、逆にスポーツ外傷を負うほどの強度のメカニカル・ストレスもロコモティブシンドロームの要因となります。この意味で、人間の一生は運動器の障害と回復を繰り返しながら、要介護リスクが少しずつ重積するプロセスともいえますので、ロコモティブシンドロームの予防には高齢者のみならず働き盛りの時期から、さらにさかのぼれば成長期からのメカニカル・ストレスの適正な管理が大切になってきます。日本整形外科学会では、今後、メタボリックシンドロームの腹囲計測に相当する運動器の簡便なテスト法などを開発し、国民に広く提供することで、ロコモティブシンドロームの予防に取り組める社会環境づくりに貢献してまいります。
数年以内にさまざまな研究成果が発表される予定ですので、報道関係各位にはその動向にも注目いただき、運動器不安定症およびロコモティブシンドロームの普及啓発にお力添えいただければと思います。 平成20年9月
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ロコモティブシンドロームについて
―新しいコンセプトには新たな言葉が必要―
日本整形外科学会理事長 中村 耕三
ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome)は、運動器の障害により要介護になるリスクの高い状態をいう。ロコモティブは運動器(locomotive organs)の意味である。
◎「運動器の健康」には適切なメカニカルストレスが必須である
第81回日整会学術総会で宇宙飛行士の毛利衛氏が、「人類は宇宙生命と成りえるか」と題して、興味深い招待講演をされた。宇宙では体を支える必要がないため筋肉や骨は非常に脆弱となる。宇宙飛行士はこれを防ぐため、エルゴメーターやゴムバンドを使い日課として運動をするが、十分でなく、長期宇宙滞在者には帰還後通常の生活に戻るためのリハビリテーションプログラムが用意されているとのことである。そして「宇宙という無重力状態では、ヒトは今の体の状態を維持できない」と感想を述べられた。これは、運動器の健康には適切なメカニカルストレスが必須であることを示す好例である。
◎「運動器の障害」は要介護の原因となる
多くの人々は高齢になることに不安を持っている。「わが国の一般生活者の高齢社会に対する意識調査」(荒井由美子ら、2005年)によると、83%の人が高齢になることに不安を感じている。その理由は「自分が寝たきり、痴呆になって要介護となる」(78%)、「自分が病気になる」(72%)、「収入」(68%)、「配偶者の病気や介護」(54%)である。寝たきり、病気、要介護に対する不安がきわめて大きい。
要介護になる理由は脳卒中(29%)、老衰(15%)、認知症(13%)、骨折・転倒(11%)、関節疾患(9%)、要支援は老衰(22%)、関節疾患(18%)、脳卒中(12%)、骨折・転倒(11%)、心臓病(7%)で(平成16年度厚労省国民生活基礎調査)、運動器疾患は要介護の重要な理由になっている。しかし、一般生活者が高齢になったときに患う病気として心配するのは、がん(77%)、認知症(70%)、脳血管障害(67%)、心臓疾患(57%)の順で(荒井由美子ら、2005年)、運動器疾患の認識度は高くないことがわかる。要介護になることと運動器の健康とは十分に結びついていない。
◎運動不足は「運動器の健康」に有害で、その先に要介護の危険がある
禁煙は難しいといわれている。製薬会社で禁煙の広報を担当している喜多英人氏によれば、禁煙をすすめるコツの一つは「喫煙は有害だというイメージを持ってもらうこと」だという(朝日新聞、平成20年5月20日、コラム「あなたの安心」)。そして喫煙者に比べ喉頭がん32.5倍、肺がん45倍のリスクがあるというデータが添えられている。いま社会で話題となっている“メタボ”にも
「肥満は有害である」とのメッセージが込められており、その行き着く先は「脳卒中」「心筋梗塞」の危険がある。
運動器の重要性をアピールする場合、「身体を適切に動かしていないことは単に運動不足という習慣の問題ではなく、運動器の健康に有害であり」、「その障害の先には要介護の危険がある」というコンセプトを明瞭に述べていく必要がある。運動器はサイレントオルガンで、障害がすすむまで症状が現れない。新たなコンセプトを述べるには新たな言葉が必要であり、広報のためには覚えやすい言葉であることが大切である。
平成20年度から、関係者の努力によって厚労省の運動器疾患対策事業が始まった。日整会ではこれらの事業を通じて、一般の人が運動器の健康を自己点検できる簡便なテスト法や予防法を開発、検証し、高齢者のみならず働き盛りの時期から、予防に取り組むことによって前向きに生活できるよう支援していきたい。
(『広報室ニュース』74号記事)
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運動器不安定症の診断
藤野整形外科医院院長 藤野 圭司
日本整形外科学会、日本運動器リハビリテーション学会、日本臨床整形外科学会は平成18年4月「運動器不安定症」の概念・診断方法を以下のように定めた。
運動器不安定症の定義 高齢化により、バランス能力および移動歩行能力の低下が生じ、閉じこもり、転倒リスクが高まった状態。
診断下記の運動機能低下をきたす疾患の既往があるかまたは罹患している者で、日常生活自立度あるいは運動機能が以下に示す機能評価基準1または2に該当する者。 運動機能低下をきたす疾患(1)脊椎圧迫骨折および各種脊柱変形(亀背、高度腰椎後弯・側弯など)、(2)下肢骨折(大腿骨頚部骨折など)、(3)骨粗鬆症、(4)変形性関節症(股関節、膝関節など)、
(5)腰部脊柱管狭窄症、(6)脊髄障害(頚部脊髄症、脊髄損傷など)、(7)神経・筋疾患、(8)関節リウマチおよび各種関節炎、(9)下肢切断、(10)長期臥床後の運動器廃用、(11)高頻度転倒者
機能評価基準
1. 日常生活自立度:ランクJまたはA(要支援+要介護1,2)
2. 運動機能: 1)または2)
1)開眼片脚起立時間 15秒未満
2)3m Timed up and go test 11秒以上
上記の機能評価基準1である「日常生活自立度」(寝たきり度)は、介護保険の「障害高齢者の日常生活自立度の判定基準」におけるJまたはAを指標にしている。機能評価基準2の運動機能を測る尺度については様々な指標が発表されているが、開眼片脚起立とTimed
up and go testが比較的容易に測定でき、危険度も少なく、頻度に関するエビデンスも多い。
●開眼片脚起立時間の測定法
両手を腰に当て、挙げた足が接地するまでの時間を測定する。測定する前に1、2度手技を実践してもらい、その後計測を行う。
I 測定の手順
1) ストップウオッチを用意する。
2) 素足(診療所では靴を履いていても可)で両手を腰に当てて、片足立ちの体勢をとる。
3)片足立ちの時間を計測し、小数点以下第1位までを記録する。ただし、最長は120秒まで。
4)左右2回ずつ実施し、よいほうの記録をとる。
II 実施上の注意
1) 段差や傾斜がある場所は避け、滑らない床の上で実施する。
2) 被測定者の周りには物を置かない。
3)「はじめ」という合図をすると、合図だけでバランスを崩す人がいるので、自分の片足を挙げて合図をし、被測定者がそれにならって片足立ちになったときから計測するのがよい。
4) 実施前に被測定者に以下の事項を伝える。
イ 片足でできるだけ長く立つテストであること。
ロ 片足立ちの姿勢は支持脚を伸ばし、もう一方の足を前方に少し挙げ、挙げた足は支持脚に触れない姿勢であること。
ハ テスト終了の条件は、
a)挙げた足が支持脚や床に触れた場合、
b)支持脚の位置がずれた場合、
c)腰に当てた両手、もしくは片手が腰から離れた場合であること。
5) 終了後の条件を被測定者に徹底させる。あらかじめ練習させておくのもよい。
●移動歩行能力:3mTimed up go test法
椅子に座った姿勢から立ち上がり、3m先の目印点で折り返し、再び椅子に着座するまでの時間を少数第一位まで測定する。スタート前は背筋を伸ばした状態で、肘かけがある椅子では肘かけに手をおいた状態、肘かけがない場合には手を膝の上においた状態とし、終了時間はスタート前の姿勢に戻った時点とする。
(『広報室ニュース』73号から一部抜粋)
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