日整会功労賞の受賞にあたり「死ぬまで元気!」
佐々木整形外科麻酔科クリニック
介護老人保健施設せんだんの丘
佐々木信之
私は、5月に京都で開催された第85回日本整形外科学会学術総会において功労賞を受賞することができ光栄に思っている。立派な表彰状と副賞にガラスの花瓶をいただいた。当日は、4月に受傷したアキレス腱断裂のためギプス固定中であり、杖を使用しての出席となってしまい運動器の大切さを改めて体験することとなった(写真1、2、3)。
小さな有床診療所を仙台で開業し37年になるが、当初から診療にあたって「痛みを断つ!」手技として、神経ブロック療法を積極的に取り入れたので、東北大学麻酔科ペインクリニック診療の先生方には、大変お世話になった。また、受賞にあたっては、日本臨床整形外科学会(JCOA)より推薦いただき、私の至らなさに助言してくれた仲間の皆さんに大変感謝する次第です。これまで臨床医としてかかわってきた運動器に関する啓発活動について触れてみたい。
十月八日「骨と関節の日」
日整会が、国民の皆様に整形外科が行なっている医療をよく知っていただくと共に、骨と関節を中心とした体の運動器官の健康が、健康の維持にいかに大切であるかを認識し、日常生活で注意していただきたいと考え、十月八日を「骨と関節の日」と定めたのが1995年である。それ以来、骨粗鬆症、腰痛、リウマチ、スポーツ等と毎年テーマー決め、各県整形外科医会は、講演会、健康相談、新聞広告、チラシ等により、整形外科が取り扱う疾患の啓蒙活動を行ってきた。
私は、JCOA理事として「骨と関節の日」委員会を担当していたこともあり、当クリニックのビル壁面に、この日が近づくと「10月8日は骨と関節の日」という横断幕を掲げている。最近の「骨と関節の日」のテーマは、ロコモティブシンドロームと腰痛・変形性膝関節症・骨折とロコモ等となっている(写真4、5)。
運動器の10年
スウエーデンのリドグレン教授は、2000年に「BONE AND JOINT DECADE 2000-2010」(以下B.J.D)を提唱し、世界保健機関も呼応し、世界各国で協調した運動が展開されてきた。日本では、B.J.Dを「運動器の10年」としているが、目的は、種々の原因による運動機能障害からの開放を目指し、終生すこやかに身体を動かすことができる「生活・人生の質」の保証される社会の実現を目指すものであり、広く市民に理解、協力を呼びかけるものである。
2011年以降も、運動器の健康増進を目指す「運動器の10年」世界運動、"Keep people moving"及び運動器の10年・日本協会の標語"動く喜び 動ける幸せ"の基本理念を広く一般社会に普及啓発を図るべく様々な運動を展開している。
ロコモティブシンドローム
2007年に日整会から、ロコモティブシンドローム(運動器症候群、通称
ロコモ)が提唱された。これは、骨、関節、筋肉、神経系などの運動器の機能が衰えて生活の自立度が低下し、要介護や寝たきりになる可能性の高い状態をいい、運動器の障害を、個別の病気としてだけでなく、加齢などによる全身の変化がその部分に現われているのではないか、と捉えている。加齢と運動不足で引き起こされるロコモは、移動能力の障害を意味しており、新たな国民病である。
第二次健康日本21(平成25?34年度実施)においても、平均寿命の伸び幅を健康寿命の伸び幅が上回るようにするなど、健康づくりに必要な具体的な目標が盛り込まれ、「ロコモ予防」として「認知度増加」を図ることとなった。
CD「ロコモかしこもサビないで」
私達は、ロコモ予防ソングとしてCD「ロコモかしこもサビないで」を2012年7月に制作した(写真6)。歌詞には、ロコチェック項目が全て入っており、曲に合わせたロコモ体操を創作したので、ロコチェクとロコトレが覚えられ、楽しく足腰を鍛えることができる。この歌とロコモ体操を、診療の現場のみならず、被災地健康運動支援としても取り入れ行っている(写真7、8)。
最近は、ロコモ予防研修会を開催し、ロコモ講座とロコモ体操の実技を終了した人をロコモボーイ、ロコモガール、ロコモキッズと呼び、彼らには、引き続いてロコモ啓発に協力をお願いする取り組みを行っている(写真9、10、11)。
私は、今後も市民のロコモ認知度80%を目指し、ロコモ啓発に心がけ、腰痛、膝痛高齢者の減少を図り、「死ぬまで元気!」な社会の実現に努力したい。
資料はこちらから → 日整会功労賞
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