■ジョンQ 上映会報告(in仙台)


◇平成15年4月 仙台市急患センター
◇演題:ジョンQ上映会報告(in仙台

 ジョン Q は2002年に公開され、アメリカのゆがんだ医療制度を鋭く突き、反響を巻き起こした映画です。この映画を観ながら、揺れる日本の医療問題について一緒に考えてみませんか?と呼びかけ、「外国と比べて分かる、日本の医療制度」と題して、4月 24 日(日)、仙台市急患センター2階ホールにおいて上映会と鑑賞後にパネルデスカッションを開催した。共催は、雉門会(佐々木信之)、ゆいネット(稲葉雅子)、青葉北在宅ケア連絡会(会川尚志)であり、後援は、仙台市医師会、 NPO 骨と関節を守る会である。
  すでに鑑賞された方も多いと思うが映画のあらすじを紹介する。ある日突然、最愛の息子が心臓病を患い、昏睡状態に陥る。適応されるはずの保険が利かない。こともあろうに会社が社員に内緒で、保険ランクを下げていたのだ。オプションで付けていた高額医療保障も受けられない。仕事はリストラされ、パートタイマーに格下げされていた。国の補助も受けられない。その間にも、子どもはどんどん弱っていく。信じられるのは自分だけだ。男は決断する。「俺が助けてみせる、息子を死なせない」男の名はジョン・クインシー・アーチボルド。愛称ジョンQ。拳銃を手に、大病院の救急病棟を占拠。医師、看護婦、患者らを人質に立てこもった。要求はただ一つ、息子の命を救うことだった。ニック・カサヴェテス監督の、熱い人間群像を導き出す名タッチが全編を貫く渾身の一作に仕上がっている。手に汗握る巧みなストーリー展開、豪華キャストによる迫真の演技、そしてジョンQの息子を愛する気持ちに涙せずにはいられない、感動の作品である(主演・デンゼルワシントン 2002年/アメリカ映画 上映時間:1時間56分)。

 パネルは、佐藤哲朗先生(仙台整形外科病院)の座長で進行され、会川尚志先生(会川クリニック)と登米裕也先生(とよま整形外科病院)がアメリカの医療状況を、千葉純冶先生(千葉クリニック)が北欧の医療状況を、佐々木信之(佐々木整形外科麻酔科クリニック)が日本の医療制度について解説した後、会場からの質問を受けた。

 来場者が 80 名と少なかったが、パネルでの質問も多く、日本の医療を他の国と比較して市民とともに見直すことができ有意義な会となった。今後も医療の現場から市民へ正確な医療情報の発信を心がけていきたいと考えている。

 最後に来場者へアンケートをお願いしたので、その設問と結果を紹介したい。アンケート回答は 60 名(男性 29 名、女性 31 名)で、年齢は、 20 歳? 39 歳が 22 名、 40 歳? 59 歳が 25 名、 60 歳以上が 13 名であった。

 設問1) ジョン Q が心臓移植を受けられないような医療保険に自分の意志で入っていたとしたら、今回のジョン Q の行動を支持できますか
  回答は、支持するが 8 名( 14% )、支持しないが 26 名( 43% )、どちらともいえないが 26 名( 43% )であり、ジョン Q の行動を支持しない人が多かった。

 設問2) 日本の医療保険制度は診察時の自己負担金、自分で支払っている保険料、事業主負担金、政府補助金から成り立っていることをご存知でしたか。
  回答は、はいが 50 名( 83% )、いいえが 6 名( 10% )、わからないが 4 名( 7% )であり、日本の医療制度の負担については良く理解されていた。


 
  設問3) 日本で心臓移植などの高額医療を誰もが今後も受けられるようにする為には、保険料又は税金の値上げをしてでも皆保険制度を維持すべきと、思いますか。
  回答は、賛成が 27 名( 45% )、反対が 4 名( 7% )、どちらともいえないが 24 名( 40% )、わからないが 5 名( 8% )であり、高額医療を誰もが受けられるよう保険料又は税金の値上げをしてでも日本の皆保険制度を維持する意見が多かった。

 設問4) または日本の医療保険を存続させる為に、高額医療 ( 移植医療・透析・高齢者のガンなど ) を一部保険適用外にする混合診療を導入すべきと、考えますか。
  回答は、賛成が 12 名( 20% )、反対が 23 名( 38% )、どちらともいえないが 22 名( 37% )、わからないが 3 名( 5% )であり、医療保険を存続させる為に、高額医療を一部保険適用外にする混合診療を導入に対しては、意見が分かれた。

 設問5)現在の日本の医療の問題点や改善すべきことなど、その他何でもご意見がございましたら記載ください。

1. “医療”のみでは、論じることのできない問題なのではないだろうかと思います。根本的に税金の使われ方をもっと国民が関心を持つべきだと考えます。

2. お互い様という環境の中で育ってきたので、アメリカの感覚にはなじまない。健康なときは保険料が高く感じるが、実際病院に行くと保険があって良かったと思う。混合診療を導入するのであれば、何でもない人はいいが高額医療を受けなければならない人は経済的にも大変なので反対です。
  しかし、なぜ日本の保健医療制度は破綻しそう(した?)なのですか?老人医療費が圧迫していると言ってはいけないと思います。医療機関の検査、処方薬の無駄をなくしたら、少なくとも今より経費の節約になるのではないでしょうか。医療費を上げる前に考えることはたくさんあるし、やらなければならないことも沢山あるはずです。

3. 医療依存度の高い患者の住宅生活の維持が困難な場合の(安定期と医師から言われ退院を迫られる)受け入れ先がなかなか無い。

4. 他国と比較すると日本の国民皆保険制度の重要さが身にしみて分かった。

5. 料金的には今くらいでいいと思う。医者も人間なので限度があると思うが診てもらって分からないと言われるのが一番困る。

6. 医師側からすると、日本の現行の保険制度がとてもおいしいのだな、と思わされた。単に映画を観るだけでなく、保険制度の基礎知識を得られる機会を設けていただいてありがたく思う。

7. 保険料または税金の値上げなしに今の保険を維持することはできないのでしょうか。

8. 自己負担金は少なく、税金の方より国が援助をしてほしい。

9. 国民が日本の医療問題にもっと関心を持ち、今までの保険制度の良さを再認識して、皆保険制度を維持する良策を考えてほしい。

10.医療保険制度の改正の必要性を説明する前に年金制度を整えるべき。

11.日本の医療保険制度は諸外国に比べ、充実されていますが、見聞するところによると、長期入院をよぎなくされている高齢者が、3カ月毎に病院を変えさせられているとか…医療費の関係上、やむを得ないのでしょうか。疑問。高齢者社会では保険料値上げもやむを得ないと思う。ジョンQの映画を観て、これから真剣に医療制度について考えてみたい。

12.公共投資を削減し、社会福祉にまわす事。国家予算の配分を変えること。

13.日本で心臓移植などの高額医療を誰もが今後も受けられるようにするためには、保険料または税金の値上げをしてでも皆保険制度を維持するべきか、について千葉先生のデンマークの話をお聞きするまでは税金が高額になると困ると考えていましたが、考えが変化しました。我が国の医療のシステムは、これからもずっと続き、安心だと思っていましたが、そうではなくなるとしたら弱者に思いやりのある方向に変わっていってほしいと願います。国民不在で悪い方向には変わって欲しくないとつくづく思いました。

14.全ての国民が等しく、健康的な生活を送ることができるということが憲法にうたわれているので、皆保険制度は必要。経済的な理由で医療が受けられないというのは、憲法違反になる。税金の無駄遣いは(公務員、議員、天下り、NHK、日赤など)山ほどある。医療、教育、福祉は削減すべきではない。そして平和憲法も守るべきです。医師の技術アップと倫理、人間性についても考慮すべき。

15.アメリカやデンマークの例がいろいろと紹介されましたが、その医療、福祉、教育については、その国民性や文化、歴史の認識の違いをそれぞれの国ごとに反映しているものと考えるべきです。日本は日本独自方法で行うべきでしょう。

以上

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佐々木整形外科麻酔科クリニック
佐々木信之

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